国産V型6気筒エンジンの歴史

1983年に日産が日本初のV型6気筒エンジンVG20Eを市販した。次いで1985年にホンダがC20Aを,1986年にはマツダが2,000ccのJF,三菱が2,000ccの6G71と3,000ccの6G72を市販した。1987年にはトヨタが2,000ccの1VZ-FEを市販した。また1991年にはマツダと三菱がそれぞれ小排気量のV6を市販し,1994年にはスズキがH20Aを市販した。

1983年から1987年に各社から発表されたエンジンは下限の排気量を2,000ccとし,バリエーションとして同時にまたはその後に2,500ccや3,000ccのエンジンが登場した。

これらのエンジンとは別に1991年にマツダと三菱が発表したV6エンジンはマツダが1,800cc,三菱が1,600ccという小排気量であった。両者はすでに1986年にV6エンジンを市販していたが,より軽量でコンパクトであるこれらのエンジンを市販した。両者とも排気量の上限は2,500ccであった。

ここで各社のエンジンのボアピッチを整理する。
日産のVGが108mm,ホンダのC型が100mm,マツダのJ型が108mm,三菱の6G7が108mm,トヨタの1VZが109mmとなっている。ホンダを除く各社がほぼ同じボアピッチとなっている。他社のV6はバンク角が60°であるのに対して,ホンダは90°である。V型6気筒の燃焼間隔は120°であるため,バンク角が60°,90°では左右のバンクでクランクピンを共有することができず,位相をつけるためにウェブをもうけることになる。60°バンクでは位相が60°であるのに対して90°では30°ですむ。そのためにクランクシャフトが90°バンクの方が短くできるのかもしれない。また,1997年に登場したホンダのJ30Aはバンク角が60°となったがボアピッチは98mmと短くなった。この時の論文ではバンク角の違いによるボアピッチの違いに言及しておりおおむねこの推測で良いようだ。

マツダと三菱の小排気量V6のボアピッチはマツダのK型が97mm,三菱の6A10は不明であるが,後に出た6B31が98mmであることから同程度であったと推測される。ボアピッチが98mmであるホンダのJ型V6は最終的にストロークを96mm,ボアを90mmとすることで3,664ccを得ている。J30Aのボア×ストロークは86×86mmのスクエアであった。マツダのK型ははたしてどのくらいの排気量に対応出来たのであろうか。2,500ccのKL-ZEのストローク,74.2mmではボアを目一杯の90mmまで広げても3,000ccには届かない。ボア90mm,ストローク78mmで2,977ccとなる。やはり当初より2,500ccを上限としてストロークを延ばさないことを前提としていたのかもしれない。

この文章はマツダの大小ふたつのV6のボアピッチを比較し,KJ-ZEMのダウンサイジング効果を検証しようとしたところ,ホンダのV6のボアピッチが他社と比較して短いことに気が付いたことから書いたものです。