ダウンサイジングエンジンの歴史

近年の過給ダウンサイジングエンジンの流行の起源はフォルクスワーゲンのTSIであることは間違いないと思います。ではそれより先に明確にダウンサイジングを打ち出したエンジンと言えばマツダのミラーサイクルエンジンでしょう。

マツダのミラーサイクルエンジンは1993年にユーノス800に搭載されてデビューしました。リショルムコンプレッサで過給された2.3リッター(2,254cc)エンジンは「3,000ccなみの馬力で2,000ccなみの燃費」をうたっていました。最高出力220馬力、最大トルク30.0kg・mはまさに3,000ccなみのスペックでした。燃費の方は後に追加された2,000ccエンジン搭載グレードの10.0km/Lを上回り10.6km/Lでした。

マツダのミラーサイクルエンジンは3リッター自然吸気エンジンを2.3リッター過給エンジンで代替したと言えます。マツダはこのエンジンで世界で初めてリショルム式の機械式過給器を用いました。ではなぜリショルムなのでしょうか。マツダはルーチェにV型6気筒2,000ccのターボ過給エンジンを採用していました。このエンジンも一種のダウンサイジングエンジンとして開発されましたが、ターボではレスポンスが大排気量自然吸気エンジンなみとは行かず、圧縮比を下げているために燃費も良いとは言えなかったようです。そこでミラーサイクルエンジンでは過給の遅れの小さい過給器として機械式過給器を選び燃費を向上させるために圧縮比と膨張比を別々に設定するミラーサイクルを適用したのでした。また、従来広く用いられていたルーツ式過給器では効率が低く過給圧も高く出来ないためにマツダはまったく新しいリショルム式過給器を用いたのでした。

後年「ミラーサイクルは低速トルクが不足するので過給した」という説明がされることがありますが、実際は当初から過給することが第一の前提であり、従来の過給エンジンの圧縮比低下による燃費の悪化を防ぐためにミラーサイクルを適用したというのが正しい説明です。